今日は2020年行政書士試験に関わる民法大改正のうち、「消滅時効」についてまとめてみたいと思います。
消滅時効に関しては、 2017年の民法大改正で、弁護士などの職業別短期消滅時効が廃止されました。
短期消滅時効の規定がなくなり、166条1項の消滅時効規定に統一された格好です。
また、「時効の中断」の概念が「完成猶予」と「更新」に改められました。
民法166条の条文
1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することが出来る時から10年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
消滅時効とは
消滅時効とは、権利の不行使が継続する場合に、その権利の消滅を認めることをいいます。
- 債権(166条1項)
- 債権・所有権以外の財産権(地上権、地役権等の用益物権 166条2項)
- 債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年
- 権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年(166条1項)
なお、人の生命又は身体の侵害による侵害賠償請求権については、②の時効期間が20年になる。(167条)
確定期限付き債権 | 期限が到来した時 |
不確定期限付き債権 | 期限が到来した時 |
期限の定めのない債権 | 債権が成立した時 |
停止条件付き債権 | 条件が成就した時 |
債務不履行による損害賠償請求権 | 本来の債務の履行を請求できる時 |
不当利得返還請求権 | 債権成立の時 |
時効の完成猶予
「時効の完成猶予」とは、時効期間をそのまま進行させることが妥当でない一定の事由(完成猶予自由)がある場合に、一定期間、時効を完成させないことをいいます。
時効の更新
「時効の更新」とは、一定の事由(更新事由)がある場合に、新たに時効を進行させることをいいます。
旧民法における、「時効の中断」という概念には、「時効の完成を止める」効果と「新たな時効の進行させる」効果との2つが含まれていました。新民法ではこの2つの効果を区別し、「完成猶予」と「更新」に区別されました。
旧民法には、「時効の停止」という概念もありましたが、「完成猶予」に整理されました。
裁判上の請求 | 完成猶予(147条1項1号)⇨裁判等により権利が確定すると更新(147条2項) 確定した権利の時効期間は10年(169条) |
仮差押え・仮処分 | 完成猶予(6ヶ月/149条) |
催告 | 完成猶予(6ヶ月/150条1項) |
承認 | 更新(承認時から/152条1項) |
完成前6カ月以内の法定代理人欠如 | 完成猶予(法定代理人の就職または本人が行為能力者となったときから6カ月/158条) |
天災等のため裁判上の請求等が不可 | 完成猶予(障害消滅から3カ月/161条) |
まとめ
旧民法の「時効の中断」がなくなり、「時効の完成猶予」と「時効の更新」とが新たに導入されました。
新民法は条文を読むだけでもわかる内容になり、スッキリした印象です。
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