【行政書士試験】LECの「全日本行政書士公開模試 第2回」多肢選択式問題で問われた判例

本日は、先日私が受験しましたLECの「全日本行政書士公開模試 第2回」につきまして、

多肢選択式問題で問われた判例を整理したいと思います。

全日本行政書士公開模試

問題そのままを掲載することは問題がありますので、判例と要旨を取り上げますが、

この時期にLECの模試に問題になるということは、重要度の高い判例と考えられますので、必須知識になるかと思います。

「全日本行政書士公開模試 第2回」多肢選択式問題のテーマ

行政書士試験における多肢選択式問題は例年、憲法から1問、行政法から2問でるのが通例です。

各問は長文穴埋めで穴は4箇所あります。

今回のテーマは、

  • 夫婦別姓訴訟(憲法)
  • 墓地埋葬通達事件(行政法)
  • 鬼ヶ城事件(行政法)

夫婦別姓訴訟(憲法)

この問題は、夫婦別姓訴訟最高裁判所判決(最大判平27.12.16)を題材にした問題でした。

私は、この判例は4年前にチェックしたと思いますが、全く忘れていたましたが、なんとか4問正解することができました。

判例の事案

婚姻に際して夫の氏を称すると定めた上で通称を使用し、または婚姻届の提出の際に婚姻後の氏が選択されていないとして不受理とされたXらは、夫婦の婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定は憲法13条、14条1項、24条1項及び2項等に違反すると主張し、本件規定を改廃する立法措置をとらないという立法不作為の違法を理由に、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求める訴訟を提起した。

民法750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

争点1

民法750条は、氏の変更を強制されない自由」を不当に侵害し、憲法13条に違反するか。

結論1

違反しない。

氏には、名とは切り離された存在として、社会の構成要素である親族の呼称としての意義があり、個人の呼称の一部である氏を、その個人の属する集団を想起させるものとして一つに定めることにも合理性がある。婚姻の際に「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。

争点2

民法750条は、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることから、女性のみに不利益を負わせる効果を有する規定であり、憲法14条1項に違反するか

結論2

違反しない。

民法750条は、夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており、夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって、その文言上性別に基く法的な差別的取扱いを定めているわけではない。

争点3

民法750条は、夫婦となろうとする者の一方が氏を改めることを婚姻届出の要件とすることで実質的に婚姻の自由を侵害し、個人の尊厳を侵害するものであり、憲法24条に違反するか

結論3

違反しない

社会の自然かつ基礎的な集団単位である家族の呼称を一つに定めることには合理性が認められる。確かに、婚姻によって氏を改める者が不利益を受ける場合があることを否定できないが、夫婦同氏制は、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく、近時、婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まってきており、このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得ると考えられる。このような状況の下では、夫婦同氏制が直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であると認めることはできない。

ちなみに、この判例は、TACの『無敵の行政書士』にも掲載されていました。

墓地埋葬通達事件(行政法)

この問題は、墓地埋葬通達事件最高裁判決(最判昭43.12.24)を題材にしたものでした。

私はこの判例については一度もチェックしたことがなく、4問中1問しか正解できず、かなりショックを受けました。

事案(最判昭43.12.24)

本件通達は、昭和35年3月8日に厚生省公衆衛生局環境衛生部長から各部都道府県協定指定衛生主管部局長にあてて発せられたものであるが、それは、当時、創価学会と他の既成宗教団体との間の対立から、創価学会員の家族の埋葬拒否事件が全国の墓地において頻発したため、これを是正すべく、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由として埋葬の求めを拒むことは墓地、埋葬等に関する法律13条が認める「正当の理由」にはあたらないとの内閣法制局第一部長の回答の趣旨に沿って今後の事務処理を行うよう求める内容であった。

そのため、墓地を経営する真言宗の一寺院であるXが、本件通達は、従来慣習法上認められていた異宗派を理由とする埋葬拒否の内容を変更し、新たにXに対して一般第三者の埋葬請求を受任すべき義務を負わせたものであって、この通達により、以後このような理由による埋葬拒否に対しては刑罰を科せられるおそれがあるとともに、現にこの通達が発せられてから多くの損害や不利益を被っているとして、本件通達の取消を求める訴えを提起した。

争点

本件通達は、取消訴訟の対象となりうるか。

結論

ならない。

通達は、上級行政機関が下級行政機関等に対して義務に関して命令するために発するもので、一般に国民は直接これに拘束されることはない。一方、取消訴訟の対象となるのは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等である。したがって、通達は取消訴訟の対象とならない

この判例では、「法規」と「命令」とを対比するように表現していますが、この知識は、行政書士試験受験者にとっては基本となっているようで、私はこの基本知識が書けていました。

この問は、実際の判例文からの抜粋で、判例をきちんと理解していれば正しく回答できた問題と言えます。

判旨

元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあっても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なることはない。

鬼ヶ城事件(行政法)

この判例は、国家賠償法3条の「費用を負担する者」(費用負担者)に関する鬼ヶ城事件最高裁判決(最判昭50.11.28)を題材としていました。

私は、4問中1問となりました。

判例の趣旨は知っていましたが、細かい語句までは知らなかったために、回答に窮しました。

事案

三重県熊野市にある観光地の「鬼ヶ城」は吉野熊野国立公園の一部にあたり、三重県が自然公園法14条2項に基づく厚生大臣の承認を受けてそこを散策するための周回路を設置していた。会社の慰安旅行でこの鬼ヶ城を訪れたXが、周回路を散策中、途中にある架け橋から転落して下半身麻痺の大怪我を負ったことから、Xが、当該周回路の設置・管理には瑕疵があったとして、国(Y)、三重県、熊野市に対して国家賠償法2条1項に基づく損害賠償を求めて提起したところ、第二審(大阪高判昭48.5.30)が、Yの責任を、同法2条1項の設置・管理者としてではなく、3条1項に基づく費用負担者として認定したため、Yが上告した。

争点

地方公共団体の執行する国立公園事業の施設に対して国が補助金を交付している場合、国は、国家賠償請法3条1項の規定する「公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者」に該当するか。

結論

該当する。

国家賠償法3条1項所定の設置費用の負担者には、当該営造物の設置費用につき法律上負担義務を負う者のほか、この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、実質的にはこの者と当該営造物による事業を共同して執行していると認められる者であって、当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止しうる者も含まれる。したがって、補助金を交付している者も、①負担額が同程度、②実質的な事業の共同執行、③危険防止可能性3要件を満たす場合は含まれる。

この論点は、記述でも出そうなので、注意したいです。

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